償いノ真夏─Lost Child─


簡単な自己紹介を済ますと、教室内がにわかにざわめき始めた。


「静かに。じゃ、深見くんの席は──朝霧の隣で良いか。朝霧、手を上げなさい」


朝霧、と呼ばれた生徒は、控えめに手を上げた。

真郷はそれを目印に、指定された席へ向かう。

「あ、深見くんの席……ここだよ」

朝霧という生徒は、声から察するに女子らしい。
真郷は特に気に止めずに、どうも、と返して席についた。

真郷の席は教室の一番後ろ、窓から二番目の席だ。なかなか良い位置だ、と思いながらなんの気なしに窓の方を見ると、朝霧と目が合った。

艶のある、肩につく前に切り揃えられた黒髪、朝日に透けそうな白い肌、大きな黒目が印象的な澄んだ瞳、そして、

「朝霧小夜子(アサギリ サヨコ)です。よろしくね、深見くん」

柔らかな愛らしい笑顔。


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