償いノ真夏─Lost Child─

夜叉淵村を出て、もう3年経つ。

そして、今日は8月20日。
──小夜子との約束の日だ。

バスに揺られながら、真郷は懐かしい景色に昔を思い出していた。

その横顔は、以前より大人びていた。異端の象徴として染めていた金髪は、東京に戻ったのと同時に黒く染めなおし、高校生活は至って真面目に送っていた。

それなりに友人もつくり、毎日が充実していた。

……だが、それはけして小夜子を忘れたからではない。彼女と別れた日から、一度たりともあの約束を忘れたことはない。

〝3年後、迎えに来るから〟

その約束を果たすため、真郷は再びこの村に訪れた。

「──ふたりとも、元気にしてるかな」

一人は、小夜子。

もう一人は、親友の夏哉だ。

二人の大切な人との再会に期待しながら、バスを降りる。

今日、小夜子を東京に連れて帰ったら、父に紹介して。
それから、二人で家を借りて、一緒に住もう。

そのための準備なら、すでに整っている。

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