償いノ真夏─Lost Child─


「実は俺にも、思い出の女の子がいてさ。小さい頃、俺が独りぼっちでも、その子だけは一緒に遊んでくれて、優しくしてくれた」

「その子って……」

「転校してきたとき、朝霧さんを見て、やっと逢えたって思ったんだけど……違うのかな」


視線が交わる。
真郷の長い睫毛が影を落とした。

小夜子は、口元を両手で押さえ、瞳を潤ませながら大きく首を振った。


「違わないよ……。嬉しい、私、ずっと待ってたんだよ。なのに、急にキミが来なくなって、だから、寂しくて」

「ごめん、何も伝えられなくて。これからは、いつでも会えるから」


真郷の言葉に、小夜子は何度も強く頷いた。


再会の祝福に彩られた夏は、今、確かに動き出していた──


< 68 / 298 >

この作品をシェア

pagetop