『王恋』☆ハロウィンは恋ざかり☆
エルンストは彼らから視線を逸らし、ぐるっと見渡すと一点に目を止めた。


壁際のソファーにちょこんと座る女性に目が留まる。


そしてソファーの横に立つ付添らしき女性。


どこかの貴族の御令嬢と言った所か……。


再び、視線を他へと動かし用心深く見ていたが、やはりソファーに座っている女性へ目が行く。


ミッドナイトブルーのタキシードを着た男性が彼女に近づくのが見えた。


ダンスに誘ったようだが、男性は残念そうに去っていく。


それからしばらく見ていたが、彼女は誘うすべての男に首を振って断っている。


ダンスが嫌ならば来なければいいのに……とエルンストは皮肉めいて考える。


まあ自分も同じような理由なのにここにいるのだが。


お付きの女性が心配そうに彼女を見ているのが気になる。


あそこにいるのは何か理由があるからなのだろうか?


エルンストはおもむろに階段に足をかけた。


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