『王恋』☆ハロウィンは恋ざかり☆
バルコニーからライトアップされたバラが咲き誇る庭へと手を引かれ出るハンナ。


甘い期待をしてもいいのですか?フェリクス様……。


キスをされて足がふわふわと浮いている気分だった。


前を歩くフェリクスの背中に熱い視線を向けるハンナの瞳。


彼女の瞳は恋する乙女。


石畳を少し歩くとバラの苗の横に猫足の白いベンチがあった。


フェリクスは胸ポケットから真っ白なハンカチを取り出すと、ベンチの上に敷きハンナを座らせた。


「ヒールは大丈夫でしたか?何も考えずにここまで連れてきてしまいました」


目の前にかがみこむと「失礼します」と言って、ハンナのドレスを少しめくり、足首をそっとつかみ持ち上げた。


「フェリクス様っ!大丈夫です」


ヒールを見る彼の後頭部にハンナは言った。


「良かった 傷はついていないようですね」


顔を上げたフェリクスに笑みが浮かんでいる。


「フェリクス様……」


「マスクをしていると、大胆になれますね」


お互いがまだ目元を隠すマスクをしたまま。


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