わたしとあなたのありのまま ‥2‥


「十分楽しんだ?」

 唐突にそんな言葉を背中に投げられ、田所が足を止める。
 敢えてそれに気付かないふりをして、私は階段へ向かって歩き続けた。

 けれど、田所は立ち止まったままで、掴んでいたTシャツが私の手から離れてしまった。


 恐る恐る振り返れば、やっぱり、ゆきさんの彼が田所の向こう側に立って居て。
 私よりも先に振り返っていた田所に向かって、

「出すもん出して、スッキリって顔だな」

 言って、薄っすらとその顔に笑みを浮かべた。


「言いたいことあんなら、ハッキリ言えよ」

 田所が低く、けれども落ち着いた声で問う。

 益々息が苦しくなった。

 二人が言い争って、何になるの?
 ゆきさんはもう、帰って来ないのに。


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