トランキライザー

 別れたらどんなに楽なんだろうか・・・。ふとそんな思いがよぎった。

「ふぅ」

 もう何度目のため息だろう。彼女は浮気さえなければ、俺は何の文句もない。家に帰らなくてもこんなに風に怒ることもない。浮気さえなければ・・・。

 何度も何度も浮気をやめると信じてきた。でも、彼女はやめなかった。俺が浮気したら、彼女は何と言うんだろう。裏切りだとでも言うんだろうか。

「ははっ」

 虚しい乾いた俺の声が真っ暗な空に消えていった。

 これ以上考えたって何にもならないと思い、俺は店の中に入った。
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