夏の空~彼の背中を追い掛けて~
私はササッと布団を畳み、床に腰を下ろした。
「真弥、そこだと体が冷える。椅子に座りな?」
「う…ん」
俊ちゃんに促され、私は机の椅子へ移動した。
「真弥、これを使いな?」
そう言うと、俊ちゃんは自分が着ていた防寒着を私のお腹にそっと乗せ、満足そうに微笑み掛ける。
まだ紀香に報告してないのに、こんなに優しくされると、何だか照れ臭くて恥ずかしい。
「何か…真弥と俊ちゃんの間に流れる空気が、今までと全然違う…」
これまでの私達のやり取りを見ていた紀香が、ポツリと呟いた。
それが切っ掛けとなり、私と俊ちゃんは昨夜の事を話す事にした。
「真弥が俺の為に子供を諦めるって言った時、内心ホッとした。だけど悪阻で苦しそうにしてる真弥を見て思ったんだ……」
「死にたくないって言う、子供の抵抗なんじゃないかって。そう思ったら急に愛しくなってさ…」
知らなかった。
あの時、俊ちゃんがそんな風に思ってたなんて…。
昨日、話してくれれば良かったのに…。
「今すぐ結婚するのは無理だけど、産む方向でお互いの親を説得する事にした。ノンちゃんには色々心配掛けちゃったし、これからも掛けると思うけど、真弥の事頼むよ!」
「うん♪任せといて♪」
俊ちゃんの言葉に、紀香は嬉しそうに答えた。