もらう愛=捧げる愛
「初音さん、覚えてる?」


「ん…。何を?」


「2月にこの病院であった研修」


「あー…。なんかあったカモ」


「ふぅん…」


「それがどうかした?」


「いや、覚えてないならいいんだ。さ、て。コーヒーもらったし、仕事戻ろうか?」


「ハルくんが飲んだのは“コーヒー”じゃなくて“砂糖”じゃない?」


笑うあたしに、ハルくんはその童顔に似つかわしくない背丈から見下ろし、


「初音さん?」


「?」


「覚悟しといて、ね?」


と、意味深な言葉を残し、給湯室を出て行った。


あたしはその意味がわからずに首をひねって、並んだ2つのマグカップを手に取る。


コーヒーのぬくもりなのか、ハルくんのぬくもりなのか。


まだ温かいカップを洗い、あたしも仕事に戻った。
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