愛する人。
* 6 *





 私は今、事務仕事をしている。


 前の会社で一緒に勤めてた人の紹介で就職出来たのだ。




「篠田さん、これお願いします」

「はい」



 十年以上住んでたアパートを出て、一人女性用のマンションを借りた。

 あのアパートを出るのは気が引けたけど。彼を……蓮くんを振り切るには、それしか無かった。





 ―――今も思い出す。



 彼に触れられた場所から、熱が生まれる。



『……優子さん…』



 ――やめて。



『…優子……』





 私を呼ぶ彼の掠れた声が……離れない。



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