愛する人。
* 16 *
久しぶりに全力で走ったせいか、心臓がドクドク激しく打ちつけて胸が痛い。
「…ハァ………ッハァ………」
―――私は玄関の前でしゃがみ込んでしまった。
早く扉を開けなくちゃいけないのに。
まだ夢心地で、心が追い付いていかない。
『―――なんで?
どうして逢ってしまったの?』
もう一人の自分が、私を責め立てる。
『忘れられてたのに――…』と。
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