Adagio
そうだ、チューバで思い出した。
――でも、俺はピアノよりトランペットより、チューバがかっこいいと思うな。
胸を張って自分の楽器が一番だと言い切ったその姿が鮮明によみがえる。
俺にはない感性を持った彼と練習したなら、あるいは。
「…いいよ、やろう」
呟くと、駒田の目がキラキラと輝いた。
「本当に!?いいの!?うわぁ…、北浜くんと練習できるなんて幸せ者だよ!」
奏みたいに俺の名前を知りもしないというのも自信をなくすけれど、駒田のように露骨に喜ばれるのもまた気が重い。
だって俺はまだ、自由曲だって決めていないのに。
「じゃあ今日の放課後、第1音楽室で!またね」
振り返るとメッシュのたくさん入った派手な頭は見えなくなっていた。
下を見ると一人でぼぅっと突っ立っている孤独な自分の足元が見えたから、その孤独さを認めたくなくて。
何かに急かされるように、俺は足を動かした。