Adagio
「こま、だ…?」
何だこれ、何だこれ、聞いてない。
だって、こんなの。
――勝てない。
そう思ってしまったことが恐ろしくて、息が止まるような恐怖に駆られる。
「今日の放課後、下手な演奏じゃ北浜くんに申し訳ないと思って練習してたんだ。あはは、まだまだ敵わないよね」
本当か?本当にそう思ってるのか?
駒田の目をじっと見つめてみたけれど、その目には何の邪悪な感情も見受けられない。
もしくは巧妙に隠しているだけ、か。
「…コンクール経験は?」
唐突にそう訊ねると、駒田は目をぱちくりさせて俺とチューバを交互に見た。
「えぇ!?コンクールなんてそんな、そんな目立つもの出ないよ!」
イラッという感情が、音になって俺の中を駆けずり回る。