恋愛模様【短編】
第四章 放課後
「泉さ~ん」


下駄箱へ向かう百合華の後ろから女子の声がして、
百合華は立ち止まり振り返る。


一人の女子が、
駆けて来た。


「誰?っていう顔してるぅ。

同じクラスだよっ」


「あ、そうなんだ」


「うんっ、

私、七瀬 紗弥っ、
よろしくねっ」

「あ、よろしく」


「てゆうか~」


紗弥は、
にやにや笑顔で百合華を見る。


「な、なに?」


「泉さんっ、
矢崎くん見てたでしょっ」

「えっ、」


「好きなの?」


「ち、違うわよ、」

― ろ、露骨な人だな… ―

「まぁまぁ、隠さなくっていいじゃんっ」

「そ、そんなんじゃ、」

「まぁねぇ~矢崎くんモテるからぁ」

「モテる…の?」

「うんっ。

でも、ハードル高いみたいっ。
彼女いないみたいなんだけどねぇ~、

作らない主義なのかなって噂もあるよっ、
なんでか知らないけど」

「そうなんだぁ…」

「あっ、やっぱ気になる感じ?」

「ち、違うって」


思わず否定する百合華に、
紗弥はにやにや笑った。


「そいえばっ泉さん、もう帰るの?
部活、入らないの?」


「あぁ。…まだ考え中」

「そう。

良かったらウチの部来ない?
演劇部」

「七瀬さん、演劇部なの?」

「うんっ、入らない?」

「あぁ、ありがと。

ちょっと…色々見てから決めようかな」

「あぁそだねっ。

じゃあ、気が向いたら見においで」

「ありがとっ」

「じゃっ」

「うん、じゃっ」


紗弥は百合華に手を振って、
部活へと行った。

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