恋愛模様【短編】
「一丁目だから、この辺……あっ、あったぁ」


矢崎の表札の家を見つけて、
百合華は、インターホンを押した。


「はい」

「あっ、あのー…

泉と申しますが、……」

「はい?」

「あ、

玲さんに、落し物を届けに、」

「落し物?」

「あ、はい」

「ちょっと待って下さい」


そう言ってインターホンが切れて、


玄関のドアが開いた。


「あっ、

あの…さっき、
保険証を落としたでしょ?
大事なものだから、
すぐに届けた方がいいと思って。

…あっ、学校で会うからさ、そのときでもって思ったんだけど、
連休になるでしょ、だから…」


出てきた矢崎を見て、
百合華は一気に言った。



「百合華?」




「えっ?…」




矢崎に名前を呼ばれて、
百合華は目を丸くする。


学校で、
知らないと言っていたのに…と、

百合華は、
矢崎を不思議に見ていた…

そんな百合華に矢崎は尋ねる。



「間違いだったらごめんけど、
百合華じゃない?」


「はい…そうですけど…」


「わぁー久しぶりだね!帰ってきたの?いつ?」


「あ、…この間」


「そっかぁ」



「…あの…

この間は、私のコト、
知らないって…」



「え?

あ、もしかして、
玲と会ったの?」



「え?……?…」



「玲は、俺の双子の兄」



「えっ?」



「あれ?知らなかった?
俺、双子なんだ」




「あ…、そうだったの」


「うん。

あ、てことは、
俺の名前、
もしかして知らない?」


「あ、…うん…」



「えっ…そうだったの?俺は、百合華って知ってるのにぃ」



「ごめん」


「ハル。

矢崎ハル!だよっ。
もう忘れないでね」



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