キミは嘘つき蝶々
綺麗に大きさの揃った玉砂利を敷き詰めた庭は、とんでもなく広大で。

配置された木も石も、高級料亭の日本庭園のように隙なく手入れされている。

家屋は黒光りした瓦屋根の重厚な平屋建てで、

ピカピカに磨きあげられた長い廊下がぐるりと周囲を取り囲んでいた。

その奥には染み一つない襖がずらりと並んでいる。

大きさからいっても相当な部屋数があることは容易に想像できた。

「片桐先輩こちらですわ。
カンナちゃんは今、離れでお稽古してますから。
ボケボケしてないでさっさといらして下さいな」

夏に無理矢理引っ張られ、奥に進んで行く。

母屋と廊下で繋がった離れは、普通の一軒屋くらいの広さがあり、やはりピカピカの廊下で囲まれていた。

夏が優雅に草履を脱いで廊下に上がる。

彼女はこっそりふすまを開けると俺を手招きした。

夏にならってそっと中を覗く。

畳の敷き詰められた部屋に着物を着た男女が立っていた。

後ろ姿で顔は見えないが、恐らく男のほうはムッツリ松宮だ。


〜世の中は夢か現か、あってなき蝶となりしか現にて、蝶がなりしか夢かとも、唐土人のたはれ草、咲くや千草に群れ遊ぶ、二つの蝶のしおらしや。

クラシカルな歌が流れだす。

それに合わせて、ふわりと二人の舞いが始まった。



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