ロシアンルーレットⅢ【アクションコメディー】
重苦しい沈黙を破ったのは蜂須賀だった。


フッと嘲笑をこぼして、顎を僅かに上向けて目を細める。


その人間性には余りに不似合いな美麗さが、不気味さを際立たせる。



自信に満ちた、だが至極冷ややかな口調で蜂須賀は言った。


「お前を殺せば、それこそ俺の計画は全てが台無しだ。お前にはこの後の行き先を、仲良しさんに伝えて貰わねぇとな」


「俺に仲間などいない」


「ああ、そうか。まぁそういうことにしたけりゃ、俺は構わねぇよ。けどさぁ、どっちにしろ、次の移動先の情報は欲しいだろ?」


どうでも良さそうに軽口をたたいているが、その瞳は挑戦的な鈍い輝きを含んでいた。



「長野だ。長野の免疫センター」



低く明瞭に発せられた情報。


長野にそんな名の研究所があっただろうか。



疑心を拭いきれないまま、龍一は己の脳裏に留めた。


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