ロシアンルーレットⅢ【アクションコメディー】
「終わりだ、坂下。血清がある以上、佐村は確実に助かる。『神の裁き』だかなんだか知らねぇけど、そんなの待っても無駄だ。

潔く自首しろ。自分の犯した罪を法的に償えよ。睦月くんのためにも」



これでも坂下の説得に全力を注いだつもりだ。けど坂下は、フッと自嘲的な笑みをこぼす。



「ムツは……あいつはそんなもん望んでねぇよ」


「いいや、望んでる。睦月くん、俺に言ったんだ、『亮くんを止めて』って」


「全部ハッタリだ。バカなお前が俺を騙そうなんて、100年はえぇよ。一回死んでから出直して来い」


両腕はだらりと垂れさがり、なんとか立ってはいるけど、全身から滲み出る脱力感は、坂下をまるで廃人のように生気なく見せた。


にも関わらず、達者なお口は健在だから嫌になる。



「俺の右眉、上がってるか?」


「はっ? んなもんどうでもいいね」


「ちゃんと見ろ、坂下。俺の右眉、上がってるか? 嘘吐く時、俺の右眉は上がるんだろ? ちゃんと確認してから嘘かどうか判断しろって」



坂下の瞳が微かに揺れる。


伝わった、そう確信した。

睦月くんの想いが坂下に届いたのは間違いない。


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