眠り姫はひだまりで




「……………や、大和は!?」


はぁはぁと息を切らしながら、お弁当中の教室へ入るなり、大和がよくつるんでいる男子に声をかけた。

「………え……先生に呼ばれて職員室行ったけど」


男子と滅多に話さなかった私が、唐突に声をかけてきたせいか、相手の男子はぽかんとしている。


「…わ、わかった…!ありがとう!」


そのまま教室を出ようとすると、ミオの声。


「色葉!弁当は!?」

「いらない!」


一瞬ミオの呆れ顔が見えたけど、気にせず廊下を走る。


早く、言わなきゃ。

大和に、お礼言わなきゃ…!




先輩達のいう爽やかくんとは、大和のことだった。



『まだ真也があなたに付きまとってた時、彼に声かけられたの。
松本色葉って知ってますよねって』

それはどうやら、前に私が先輩達に、校舎裏で怒鳴られた時の、翌日のことらしい。


だから先輩達もまだ私のこと怒ってて、知ってるけど?と怒ってるふうに返したって。


そしたら大和は、ちょっとお話いいですか、と言ったらしい。


『それでねー、まぁ、よく見たらちょっとだいぶイケメンくんだったから、仕方なく応じてあげたのね?そしたら、話の内容はあなたと真也のことで』


『え…………あ』

先輩達のことがあった放課後、私が大和に斉藤先輩のことを相談していたことを思い出した。

『んで、言われたの。色葉は先輩に気はなくて、先輩をちゃんと振るつもりだから、もうなにも言わないで欲しいって』



『…………そう、だったんですか……』


だから、あの後先輩達から何も言われなかったんだ…。
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