眠り姫はひだまりで
*
「……………や、大和は!?」
はぁはぁと息を切らしながら、お弁当中の教室へ入るなり、大和がよくつるんでいる男子に声をかけた。
「………え……先生に呼ばれて職員室行ったけど」
男子と滅多に話さなかった私が、唐突に声をかけてきたせいか、相手の男子はぽかんとしている。
「…わ、わかった…!ありがとう!」
そのまま教室を出ようとすると、ミオの声。
「色葉!弁当は!?」
「いらない!」
一瞬ミオの呆れ顔が見えたけど、気にせず廊下を走る。
早く、言わなきゃ。
大和に、お礼言わなきゃ…!
先輩達のいう爽やかくんとは、大和のことだった。
『まだ真也があなたに付きまとってた時、彼に声かけられたの。
松本色葉って知ってますよねって』
それはどうやら、前に私が先輩達に、校舎裏で怒鳴られた時の、翌日のことらしい。
だから先輩達もまだ私のこと怒ってて、知ってるけど?と怒ってるふうに返したって。
そしたら大和は、ちょっとお話いいですか、と言ったらしい。
『それでねー、まぁ、よく見たらちょっとだいぶイケメンくんだったから、仕方なく応じてあげたのね?そしたら、話の内容はあなたと真也のことで』
『え…………あ』
先輩達のことがあった放課後、私が大和に斉藤先輩のことを相談していたことを思い出した。
『んで、言われたの。色葉は先輩に気はなくて、先輩をちゃんと振るつもりだから、もうなにも言わないで欲しいって』
『…………そう、だったんですか……』
だから、あの後先輩達から何も言われなかったんだ…。