十五の石の物語
「南の森の話、森の民のことは誰にも言うなとあの人から念を押されていたのよ。
知らないなんて言ってごめんなさいね。
でも、あの人は本当に彼らのことを大切に思ってたわ。
彼らが心無い人達にみつけられ、さらし者にされたりそれ以上のことがあっては大変だって、そりゃあ心配してて……だから、きっと私にしか話してないと思うわ。
アベルにも言ってないはずよ」

「アベルとはどなたなのです?」

「あぁ、息子なのよ。
あの子は、父親が亡くなったことも知らずに今もどこかを彷徨っているのよ。」

「彷徨ってるってどういうこと?」

「なんでも、伝説の宝石をみつけるとか金脈をみつけるんだとかって言って家を出てから、もう何年も音沙汰なしなのよ。」

「そうなんだ。おばさんも大変だね…」

サリーにそう言われ、アランの妻は苦笑した。



「私達に贅沢な暮らしをさせてやるんだ…なんて言ってね…
私達はそんなもの望んではいなかったのに……
父親が亡くなったことを知ったら、あの子はどんなに悲しむことかしら。
あの子は小さい頃からとても父親に懐いてたから…

……あら、ごめんなさい…
そうそう。南の森のことだったわね。
あなた達行商人の町はご存知かしら?」

「えぇ、存じております。」

「だから~、そこでクレマンさんにおばさんのことを聞いて来たんだよ!」

「そうだったわね。
あの町からずーーーっと南に行った所に南の森はあるらしいのよ。
あのあたりは、山や沢はあるけど別れ道がほとんどないの。
だから、とにかくずーーーっと南に下って行けば良いのよ。」

なんとも漠然とした話だった。
そんなことで南の森はみつかるのだろうか?

私の不安そうな顔に気付いたのか、女主人は私に微笑みかけるとさらに話を続けた。




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