十五の石の物語
12、黒蝶貝(美しい契り)
「おばさん、アベルが帰って来たらびっくりするだろうね!」

「そうだろうな。
しかし、なによりも嬉しい驚きだろう…
ご主人を亡くされた後、気丈にもお一人で店をきりもりされてはいるが、内心はとてもお寂しいだろうと思う…
そんな時にアベルさんが帰って来られたら…」

「そうだろうね…
これからって矢先に旦那さんが死んじゃったんだもんね…
明るく振舞ってても、内心はきっと寂しいはずだよね。
でも、これからはアベルがいてくれるんだ。
おばさんも元気になるさ!
…そういえば、ジネット、あんたの家族は?」

「わ、私の家族…ですか?
私の父は…もう亡くなりました…
兄弟はいませんが、故郷には母がいますわ。」

「そうなんだ…
じゃ、お母さんを一人残して愛しい人を探しに来たってわけか〜!
あんた、見掛けによらずけっこう情熱的なんだね!」

サリーは、ジネットの背中を景気良く叩き、ジネットは何も言わずに俯いた。



「そんな顔しないでよ。
あたしは別にそれが悪いって言ってるんじゃないよ。
あんた、ふだんからあんまり感情を出さないから、却って人間味が感じられるって言ってんだよ。」

「すみません……」

「ジネットさん、あなたが謝る必要はない。」

「チェッ、またあたしが悪者か…
いつもこれなんだもんな…」

サリーはそう言い残すと早足でさっさと先に進んで行った。



「本当にごめんなさい。
私のせいで、いつもこんなことになってしまって…」

ジネットは、目を伏せたまま、小さな声で呟いた。



「いや、あなたのせいではない。
あなたとサリーは……そう、多分タイプが違い過ぎるだけのことです。
もう少し、時が経てばきっとわかりあえるようになりますよ。」

「レヴさん、ありがとうございます。
私も、これからはもっと気を付けるようにしますわ。」

マリアの家にいた頃は特に問題はなかったのに、なぜこんなにもぎくしゃくしてしまうのか…
この状態が続くようなら、サリーと一度じっくりと話さなければいけないと思った。
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