十五の石の物語
「じゃ、俺達は食事の用意に取りかかろうか?」

戻ったジャンがサリーに声をかけた。



「そうだね!」

「……では、私も何か…」

「レヴ、料理なんて出来るの?!
あんたはそこで本でも読んで待っててよ。」



確かにサリーのいう通り、私は料理等したことはない。
出来ないのは事実なのだが、それでも私はその言葉に不機嫌になっていた。



(私には何も出来ないと馬鹿にして……)



もやもやした気分で私は手持ち無沙汰に部屋の中を見て歩く。



(本でも読んで…って、どこに本があるっていうのだ…)



チェストの上にはジャンの両親らしき夫婦とジャンがまだ少年の頃の写真が飾ってあった。



(彼は一人暮らしらしいが、彼のご両親はどうされたのだろう?違う所で暮らされているのか…それとも…?)



しばらくして浴室からヴェールが戻ってきた。



「おぉっ!」

ヴェールの鮮やかな緑色の髪は、今でも緑には違いないのだがかなり落ち着いた色に変わっていた。



「どうですか?」

「ずいぶん暗いトーンになったな。
君の緑色の髪はとても美しいから残念だが…しかし、今の色もとても綺麗だ…」

「レヴさんの銀色の髪も美しいですね。私もそんな髪の色に生まれたかった…」

「そうでもないのだよ。
両親はどちらも黒い髪だから、幼い頃、私はもしや捨て子ではないかと疑った程なのだ。」

「まさか……」

「ただ、私は非常に父親の顔に似ている…
それに、先祖に私と同じ髪の色の人がいることを知ってからはそんな疑念もなくなったのだがね…」

「それは良かった。隔世遺伝というやつでしょうか?」

「そうかもしれんな。」

髪の話から、私はずっと忘れていた子供の頃の記憶を思い出した。
今になれば特になんとも想わないようなことも、子供の頃にはやけに大袈裟に気になってしまうものだ。
ヴェールの髪は人が羨む程の美しさをしているというのに、彼は子供の頃だけではなく大人になった今でもずっと気に病んできたのかと想うと、私の胸は痛んだ。
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