- π PI Ⅱ -【BL】


「ふっ。俺もあのときは若かったぜ」


なんて翳りを滲ませた顔で額を軽く覆う周。今更かっこつけたって、その事実には変わりないだろ!


「あたしだって失敗したと思ってたわ。こいつのいいところなんて、刑事って職業だけだもの。あたしを捕まえて欲しかったのに」


「捕まえただろ!そのあと12時間で脱走したのはどこのどいつだ!!」


周が珍しく怒鳴って、女を睨んだ。


何か…色んな意味で根が深そうね…


一難去って、また一難。


陣内だって周のこと狙ってるのにーーー!!


その上こんな訳分からん女の登場で、俺どーすればいいの!!




「ヒロ。あたし刹那(Setuna)って言うの。あたしヒロみたいなきれいな男大好物♪気が向いたら、いつでも声を掛けて♪」


大好物…?


く、食われそう……



小さくウィンクすると刹那さんは大人しく帰って行った。


「あの蜘蛛女、何しにきたんだよ!」周はいきり立っていたが、俺は呆然。


ホントに…何がしたかったんだろう。




―――…今日は何だか色んなことがありすぎて疲れた。


俺はソファに寝そべって、周おおかみ(ぬいぐるみ、ね)のふわふわの頭を撫でながら、


「陣内は周のこと狙ってるし、刹那さんは変な人だし…俺、どーすればいい?」


なんておおかみに問いかける。


こんなことしてる俺、相当イタい。だけどきっと周の影響だろうなぁ。


『とりあえず周とラブラブ♪風呂に入ればいい』


なんておおかみが答えてくれて、


「風呂…かぁ。でも一人でゆっくり…」


言いかけて、はっとなった。



おおかみのぬいぐるみが喋るか!


ぎろりと目を上げると、周のにこにこ顔がすぐ近くにあった。



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