- π PI Ⅱ -【BL】


毛髪なんて誰でも手に入れられる。


一日に何本も抜け落ちるものだし、それを手に入れるのは、たやすいことだ。社内の人間なら誰でも―――……


だけど誰が―――…?


分からなくなって俺は髪を乱暴に掻いた。


髪を入手することができて、さらに俺の血液型を知る者の犯行だ。そして狙われた被害者は俺と良く似た風貌をしている。


さらには日曜日俺が周と水族館に行くことを知っていた者。




―――と言うことは、案外犯人は俺の近くに居ることになる。




刹那さん―――…は、違うな。彼女は女性だし、犯行時刻は俺と一緒に居た。


俺の髪を手に入れられて、俺の情報を知る者……さらに俺はそいつに恨まれて可能性がある。


考えて、俺は頭を上げた。


一人だけ……居たじゃないか…




―――――

――


どれぐらい時間が経ったろう。腕時計も没収されてたし、時間の感覚が薄れてきた頃、取調べを行った刑事がやってきた。


「出ろ。お前の無実は証明された。橘警視に感謝するんだな」


「証明……?しゅ…橘さんが…?」


「ああ。お前のアリバイが判明した。お前がいきつけの喫茶店で女と居るところを店員が覚えていた。良く来ることもさながら、変わった風貌の女だったから数人の店員が覚えていたんだ。


さらにはその女がカップを落とすというトラブルを起こしたからな、印象に残っていたらしい。運が良かったな」


運が良かった―――…?


いや、あれは偶然ではなく―――必然。


刹那さん……


もしかして…こうなることがわかっていて、わざと―――?




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