きみ、ふわり。


「わたし……」

 声を発したと同時に紗恵の瞳が潤み始めた。
 怖くなって逃げ出したくなった。

 けどそんなこと出来るはずもなく。


「今月一杯で転校するんです」

 紗恵は押し出すように一気に吐き出した。
 その瞳は真剣で深刻で、決して嘘を吐いているようには見えない。

 けど、そんな言葉、簡単に受け入れられるはずがなかった。


「冗談やめろって。
 俺の反応見て楽しんでんの?
 別にそれは構わねぇけどさ、この冗談はちょっとキツいわ。
 俺、怒るよ?」

 言って、大袈裟なぐらい笑い飛ばした。飛ばそうとした。
 でも――

 できなかった。


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