きみ、ふわり。


「とう!」

 戦隊ヒーローみたいな掛け声と共に、悠斗が俺の頭頂部に手刀をふわりと優しく落とす。
 表情変えずに、俺より5センチぐらい背の高い悠斗を上目使いで見上げれば、

「俺は瀬那と行きたいの」

 と言ってニッと悪戯っぽい笑みを見せた。


「悪い、肉は無理。
 今俺、何食っても味良くわかんねぇし、金が勿体ない」

「じゃあ瀬那は食うな、俺一人で食う」

「ふざけんなだし。
 美味そうに肉食うお前なんか見て、何が楽しんだよ?
 逆に苦痛だわ。拷問レベルだわ」

 言って俺も笑った。



 悠斗の言動はいつだって可笑しい。
 紗恵のことには一切触れず、いつも通り振る舞う悠斗に俺はかなり救われていると思う。

 たかが悠斗、されど悠斗だな、と訳のわからないことを思ったり。


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