きみ、ふわり。


 季節は三つ変わり冬。


 俺は進学なんかとっくに諦めていたのに就職活動も全くせず、相変わらず抜け殻を気取って自分からは何もしようとしなかった。


 女(継母)は進路のことを話題に出すことは一切しない。

 ありがたいのだけど。
 きっとうるさく言われたら、ブチ切れるけど。

 それでも、自分自身がどんどん駄目になっていくような気がして怖かった。



 紗恵が去ったばかりの頃、女は俺の傷心の原因に目ざとく気付き、

「恋ってさぁ、甘ければ甘いほどその終わりはしょっぱいよねぇ」

 なんて、独り言のように零した。


 慰める訳でもなく、ただ、共感を口にした女。
 俺は味方がいるように感じて、ほんの少し気持ちが軽くなった。


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