きみ、ふわり。


 俺の方こそ、紗恵の人生の一部になる為だけに、この世に生まれて来たんじゃないだろうか。
 だとしたら、これ以上生きる意味なんか俺にはないんじゃないの?



「瀬那くんがそんなことしたって、紗恵ちゃんは喜ばない。
 哀しむだけだよ」

 ああ、栗重の泣き顔も、涙声も痛々しい。
 可哀想に。
 栗重、可哀想。


「哀しむ? 紗恵はもう居ないのに、どうやって?」

 乾いた笑い声が俺たち以外誰も居ない教室に響き渡った。


 笑ったのは俺だ。



「もう、どうでもいいや。
 栗重、辛そうだな、抱きしめてやろうか?」

 投げ槍とかではなく、思考がストップした感じだった。
 現実逃避みたいなものかも知れない。


 俺は――
 紗恵から逃げた。


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