きみ、ふわり。


 けれど、真っ直ぐ過ぎる紗恵の体当たり的アプローチには、誠で答えなければと思った。
 それが俺の義務のような気がした。

 男としてではなく、人間として。



 どういう訳か紗恵が、フッと目を細めて穏やかな顔を見せたので、ようやく俺は彼女の頬から両手を剥がして、代わりにその頭をクシャリと撫でた。

 サラサラした感触が心地いい。
 そして、シャンプーの爽やかで優しい香りが俺の鼻をくすぐった。



「『それでもいい』って言っても、きっと先輩にとっては迷惑なんでしょうね」

 言いながら照れたように笑みをこぼす彼女の顔は、全てを悟ったようにみるみる晴れ渡っていく。


 百面相だな、と。
 遠目に見ているような感覚で思う。


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