きみ、ふわり。


 思わず立ち止まった。
 『助けて』に反応してしまった。
 男の性(サガ)だろうか。


 幼い頃、悪を倒す正義の味方『ヒーロー』に憧れて、いくつになってもその気持ちが心のどこかに残っている。
 男なんてそういうものだ。
 俺だけじゃないはず、絶対に。



 背中に衝撃が走り、振り返れば栗重の頭が俺の背中にめり込んでいた。

 なんというフットワークの鈍さ。
 腹が立つどころか、呆れた。


「なんなんだよ?」

 苛立ち顕わに問えば、「紗恵ちゃんが……」と、両手で額を抑えて肩を激しく上下させながら、苦しげな顔で呻くように言う。

 『苦しげみなみ』だ。
 巧くない、13点。



 ああ、やっぱり。
 彼女のことか、と気持ちがみるみる落ちた。


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