きみ、ふわり。


「わかった、もういいよ。
 紗恵が考えてること、俺にはさっぱりわかんねぇけど、他人(ヒト)の気持ちなんて、どんなにたくさんの言葉を使ったって、結局そのまんまは伝わんねぇだろうし。
 とにかく今の俺は、ただこうしてるだけで満足だから。
 もちろん抱きたいし、紗恵が俺の傍に居てくれたら、きっと近いうちにそうなると思う。
 少しだけ時間ちょうだい。
 頼むから、俺から離れないで」

 何故こんなに必死になっているのか、自分でもよくわからない。


 紗恵とは今日会ったばかり。
 昨日まで存在すら知らなかった。

 俺の世界に急に飛び込んできて、半日足らずでその全てを変えてしまった紗恵を、俺はどうしても手放したくなかった。

 掛け替えのないものになってしまった。


 ただ、それだけ。
 けどそれって、宝くじの一等当てるぐらい奇跡的で凄いことだと思う。


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