スピカ
 携帯が壊れてしまったせいか、友達と遊ぶのはかなり減ったと思う。
電話やメールで誘われる事が無い訳だし、遊び仲間だった亞未も、今は誘うに誘えない。邪魔したくないからだ。

遊んだとしても、夜遊びはほとんどしなくなった。
連絡が取れないという事は、心配をかける事だから。いくら緩い親でも、心配しない親はいないのだ。我ながら、親孝行だと自画自賛したいくらいで。

「ただいまー」

凍り付いた足先は、感覚がなくてじんじんする。キッチンから聞こえる「お帰り」に吸い寄せられるように冷たい足を向けた。

「あ、鍋だ」

ぐつぐつと煮る音と湯気を前にして、急にお腹が空いてきた。

眼鏡を曇らせたお父さんが鍋の番をしている。慣れない事をさせられて、お父さんは困ったような顔をしていた。いつもは、あたしか蛍姉の役目だったっけ。
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