∈いろは物語∋
はじまり
「またか・・・。」
「今月に入って何人目だい?」
「さてね、いちいち数えちゃいないさ。」
川に無惨に打ち上げられた男の溺死体を囲みながら、農婦たちは口々に言った。
「どうしたもんかね。これじゃキリがないよ。」
「あの屋敷に近付く方がどうかしてるのさ。」
「そうそう、自業自得だよ。」
「でも前回のトラキチにはかみさんも子供も居たらしいじゃないの。」
「妻子持ちのくせに、鼻の下をのばした罰さね。」