断崖のアイ
「彼はどこに連れられているのですか?」

 話題を変えるように問いかけた。

「まだ追ってる最中だよ」

 車が止まった場所は空港──どうやらベリルは国外に連れ去られたらしい。先に降りた泉が、飛行機を準備している連中に駆け寄った。

 それを眺めて車に背を預けるカーティスに近づく。

「まだ何か訊きたいことでも?」

 浅黄色のカーゴパンツと厚手のジャケットの懐(ふところ)にはハンドガンの膨らみが確認出来る。

 明るく振る舞っているが、ユーリへの警戒は怠っていない。

「あなたは何故、残ったのですか?」

「そうだな……」

 青年の問いかけに空を仰ぐ。

「オレがやめても奴の状況は変わらない」

「!」

「別の神父が派遣されるだけだろ」

 オレだけがのうのうと生きるなんて、出来ないんだよ。
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