断崖のアイ

*左の道

 ジンバブエ共和国──アフリカ南部の共和制国家。首都はハラレ。

 アフリカ大陸の内陸部に位置し、モザンビーク、ザンビア、ボツワナ、南アフリカ共和国に隣接している「世界最悪の独裁国家」と評される。

 住人すらも踏み込まない山の中腹に、それはひっそりと建てられていた──灰色の壁には監視カメラがいくつも設置されていて、背後には切り立った山が建物を守るようにそびえている。

 ライフルを持った男たちが建物の周りを行き交い、侵入者を決して許さない雰囲気が窺えた。

 お世辞にも清潔とは言えないが、所々に施された装飾がどこかしら非現実的な空気を漂わせている。

 歩けば回廊に響き渡る靴の音が重厚感を与え、柱の上部にはガーゴイルが彫刻されていた。

 壁には、暗めの糸で織られたタペストリーが、この建物の存在理由を表していた。

 そこに描かれているものは、コウモリに似た翼を広げた悪魔の図──
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