断崖のアイ
 そうして青年はブリスベン空港に降り立つ──オーストラリア連邦はオセアニアに位置する連邦立憲君主制国家で、首都はキャンベラ。

 ブリスベンがあるのはそのオーストラリア連邦北東部の州、クイーンズランド州にある。オーストラリアで2番目に面積の大きな州で、ブリスベンはその州都だ。

 オーストラリア第三の都市はそれに見合う外観で青年を迎えた。ブリスベン川が優雅に流れ、いくつかの橋が美しく川の上を飾っている。

 観光で来ていたなら、この美しい風景も楽しめたのかもしれない。とにかく現地の仲間と合流し、詳細を聞かなければ。

「ユーリ神父?」

「!」

 空港を出てすぐに声をかけられ振り返ると、そこには男が1人立っていた。ブラウンの短髪にサングラスをかけている。

「あなたは……?」

 怪訝に訪ねると、その男性はサングラスを外して笑顔で手を差し出す。

「あなたのサポートをするようにと仰せつかった者です」

「そうですか」

「こちらへ」

 30代ほどの男はヘインズと名乗り車まで案内する。

「昼間はサングラスしていた方がいいですよ。オーストラリアはオゾンホールから近いんでね」

「! 解りました」

 青いキャデラックに乗り込みヘインズは車を走らせた。

「近くの教会に全て準備してあります。何かご用の時は俺に連絡してください」

「ありがとうございます」

 信者たちの中にも組織の一員が存在する。ヘインズもその1人だ。彼らは組織から使命を受けた神父や牧師たちのサポートをしてくれる。
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