断崖のアイ

*神の名のもとに

 青年は部屋に戻りベッドに腰掛けた。

「ふう……」

 自然と溜息が漏れる。そしてデスクに乱雑に投げた紙に視線を送り椅子に座り直した。視線はノートパソコンに向けられる。

 しばらく閉じられたパソコンを見つめ静かに開いた。指令を受けた者は対象の情報を端末から自由に調べる事を許されている。

 人工生命体……やはりまだ信じ切れない。事実だと認証したから捕らえる決定を下している事は理解している。
 それでも心のどこかでは疑っていた。

「……不死か」

 眉をひそめる。

 不死──それは神のみが持つもの。ヴァンパイアなどは永遠の命と謂われているが、実際には寿命がある。人に比べれば永遠ともいえるほどの長寿なため不死だと思われがちだ。

 そして死は確実に存在する。決して絶対の「生」ではない。それは天使や悪魔とて同じ……絶対的な「生」などあり得ない。

 この男は神から造られたものでもなく、神しか持ち得ない「不死」を持つ者。

「神から造られた者でないのなら、滅することは赦される」

 彼らは決して対象者を殺める事はない。全ては神が造られたものだから、神のものを滅する事は許されない。それが例え悪魔であっても……しかし、その対象者は滅びる事の無い不死者だ。

 悪魔なら地獄に追い払う事が出来る。だが、この世に存在する者を追い払う場所などありはしない。

 だから彼らは『ミッシング・ジェム』を捕らえて封印する。
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