ヰタ・セクスアリス(vita sexualis)物語

・迷路の片隅

しのぶとの再会は神様のきまぐれでは無くて必然の様だった。彼女も殆ど同じ時間帯に出掛けているらしく、今日も彼女の姿を見る事が出来た。二人は何時も駅ですれ違っていたのだが、それに気がつか無かっただけの様だった。
そして、純の好奇心は彼女の向かう先だった。

彼女は昼間、一体どこに向かうのだろうか……。

一緒に通学している友人二人には、適当な嘘をついて、純はしのぶの後をつけて見る事にした。

          ★

しのぶが下りたのは純の下りる駅から二つ目の小さな駅だった。通勤通学時間で有るにも関わらず昇降客はしのぶ一人だった。純は彼女に見つからない無い様に後をつけるつもりだったが、あまりの人通りの無さ……振り向いたしのぶの視線と純の視線が合った時、純は言葉が出ずに、そのまま彼女を見詰めるだけだった。

「ついて来る?」

しのぶの言葉は純にとって願っても無い事だった。
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