ヰタ・セクスアリス(vita sexualis)物語

・草の香り

風は既に秋の香りがする。雑草の迷路の香りも若い瑞々しい物から、枯れた香りに変わり始める。

しのぶはその背の高い雑草の迷路をくるくると歩きまわり小動物の様に微笑みを見せる。

「待って、しのぶ……」

笑顔を見せて入る物の、しのぶの笑顔は影が有る。心の底から笑って居ないのは純には痛いほど分った。

しのぶを追いかけて迷路を曲がったその時、彼女の姿が突然消えた。突きあたりで道がそこから向こうには無い。

「しのぶ?……」

突然姿を消したしのぶの事が急に心配になって、純は慌てて前後左右を確認する。しかし、そこにしのぶの姿は無い。

母親から逸れた子ネズミの様に純は彼女の姿を必死で探し求める。突然の孤独感に純の心は乱れ、一瞬自分を見失いかける、その時だった。足元の草むらからしのぶがごそごそと這い出して、悪戯した時の子供の様な表情でしのぶが姿を現した。
< 31 / 89 >

この作品をシェア

pagetop