フィレンツェの恋人~L'amore vero~
不思議な子。


ハルの横顔を見つめながら、そんな事を思う。


無口なのかと思いきや、意外とおしゃべりなくせ、秘密主義。


謎めかしくて、奇妙な子。


スウェットを着た事もなければ、パプリカを知らなくて。


だけど、電卓のような速さでパチパチと数字を叩き出す頭脳。


「ハル」


「うん、何?」


この子は一体、何者なのだろう。


「いいえ。何でもないの」


「ふうん。変な東子さん」


ハル。


あなたは、誰?











地下食品売り場で買い物を終え、私たちは一階のフラワーショップでポインセチアの鉢植えを買った。


五号鉢からたっぷりこぼれる、真っ赤に染まる葉。


「これをクリスマスツリーの代わりにするのはどうかな」


とハルが言い出した事がきっかけだった。


金額は三千五百円。


「これはぼくが持つから、悪いけど、これは東子さんが持ってくれる? こっちの方が軽いでしょ」


ハルは大量に買い込んだ食材の袋を、


「ありがとう」


私はポインセチアの鉢を胸に抱えた。


「真っ赤。不思議ね。どうして赤いのかしら、ポインセチアの葉って」


私が呟くと、ハルが言った。


「イエス・キリストの血だと言われてるんだ。ヨーロッパでは、そう伝えられてる」


「へえ、初めて聞いたわ」
< 89 / 415 >

この作品をシェア

pagetop