一人鬼ごっこ
第十四章 奇襲
「きょ……京介!?」

『長い爪……私に……!! 京介がっ!!』

 思考が追い付かない。
 京介が――長い爪?


 鬼――――?


『助けっ……きゃああっ!!!』

 千秋は後ろを振り返って叫んだ。

『京介……なんで……? やめて……』

 千秋は何かに怯えている。
 ――何に? 京介に?
 俺には何も見えない。
 千秋の目には、一体何が映っているんだ??

『いやあっ!!』

「千秋ッ!?!?」

 その時、急に千秋がしていたネックレスが千切れ落ちた。
 いや、千切れ落ちたんじゃない――千切れ落とされたんだ、きっと。

 誰に?
 京介に?
 京介はそんな事しない。
 じゃあ何故千秋は京介を呼ぶ?

 俺の頭は今にもフリーズしてしまいそうだった。
 何故? 何故?
 疑問ばかりが浮かぶけど、答えは1つも浮かんでこない。

 俺は千秋を守るように、強く抱き締めた。
 千秋の体は震えている。


 その時だった。
 千秋の体中から赤色が吹き出たのは。
 それが血だと気付くまで、そう時間はかからなかった。
 生温い鮮血が、俺の体に飛び散る。

 しっかりと抱き締めていた千秋が、空気になった。
 抱き締めていた感触が消えた。

 千秋が――――消えた。
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