一人鬼ごっこ
 いつ寝たのか分からないが、いつの間にか朝を迎えていた。

 あれ?
 俺寝たのかな?

 暫らくベッドで仰向けになっていると、母親の声が聞こえてきた。

『椿――起きてる?』

 どこか遠慮がちな声だった。

『学校どうする?』


「――行かない」

『そう……』

 普段なら『何馬鹿な事言ってるの!』くらいは言うだろうが、今日は何も言わなかった。

『朝ご飯は? 作ったけど……』

「いらない」

『じゃあ、下の部屋に置いとくわね』

「…………」

 俺はごろんと横を向いた。

 何もする気が無い。

 ――京介がやったのか?
 千秋を……千秋を……。

「ぁああっ!!」

 受けとめたくない現実が、そこにあった。

 時間が過ぎていく。
 何もしないままに。
 俺はどうなるのか。
 このまま死ぬのか。
 それでもいいかも。
 千秋が居るならな。
 もうどうでもいい。
 どうでもいいんだ。
 涙すら出ないんだ。
 千秋が消えたのに。
 信じられないんだ。
 なにも分からない。
 考えたくないんだ。

 その時携帯が鳴った。
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