初恋プーサン*甘いね、唇

機内に乗りこんだ私は、


「ふたりがカンパするから、どうせならリッチを味わって」


と予約してもらった、ビジネスクラスの座席に座った。


前に乗ったエコノミークラスのときの微かな記憶と比べても、明らかに広々とした空間だった。


シートだって真っ直ぐになるし。


約12時間のフライトも、これなら問題なく過ごせそうだと、感謝の念を送っておいた。


ただ。


唯一、リッチという面で困ったのがミールだった。


お箸の国で生まれ、お箸の街で育った私。


だから、豪華なオードブルとメインディッシュ、特選のチーズやデザートに困惑してしまった。


学校給食みたいな感じで、出てくるとばかり思っていたのに。



食べ方などが見当もつかず、仕方なく隣に座っている初老のおじいさんの後を追う、輪唱みたいな方法でやり過ごした。


私はここでも、2本の棒のありがたさに感謝の念を送るのを忘れなかった。


食事を終えると瞼が重くなってきたので、シートを倒して横になる。


隣で訝しがるおじいさんなんて気にせず、私は1分もかからず夢の入り口に立った(と思う)。


大した健脚っぷりだ。

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