トルコの蕾








もっと早く出逢っていればと思ったことは一度もない。


こんなふうに出逢っていなければ、世間知らずで流されやすい自分は彼の素晴らしさに気付くこともなかっただろうと思うから。


ききすぎた暖房は寒がりな自分の為だろう。もう何度も訪れているこの部屋の、リモコンの位置すら自分が把握していないのは、それだけ彼に甘やかされているという証拠だろうと彼女は思った。


冷蔵庫を開ければ自分の好きなレモンティーが入っているだろうし、喉が渇いて痛むのだからキッチンでそれを飲めば良いだけのことだ。

けれど、限られた逢瀬を彼と、たとえばキッチンへ行くほんの少しの時間でさえ、離れて過ごすのは惜しい。



いつの間にか枕元に置かれたクリスマスプレゼントには、彼が目を覚ましたその瞬間に気付いたふりをして、嬉しそうに喜んで見せることにしよう。

きっと彼は自分の驚く顔が見たいはずだから。



彼女は愛しい彼の頬にそっとキスをして、もう一度静かに目を閉じた。







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