甘い旋律で狂わせて
あたしには兄弟がいないから、この家にはあたしとお父さんとお母さんだけ。

とても静かな家庭だった。


そんなあたしももう気付けば結婚して子供を持ってもいい年齢。


後は孫の顔を見るだけだと言って、結婚をすごく勧めていたお母さん。



――だけど、あれ以来お母さんはあたしに何も言わない。


静かに見守ってくれていることに、優しさを感じていた。


だけどもちろん、お母さんなりに気になってはいるみたいだった。



「明日は金曜日だけど、夕飯いるのかしら?」

「ううん、食べてくる。」

「そう。デート?」



嬉しそうに尋ねてくるお母さん。

あたしは少し目を泳がせながら、照れたように頷いた。

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