甘い旋律で狂わせて

――夏は、どうやらもう終わりらしい。


吹く風が少しだけ、冷たくなったように思う。



ううん、冷たく感じるのは

ただ、あたしの心が冷えているだけで

もしかしたら、風自体が冷たいわけじゃないのかもしれない。



「懐かしいなぁ……」




ぼんやりと地平線の向こうを眺めながら

潮の香りを感じていた。





日が少し短くなった夕暮れ、あたしはまた、“ここ”に来ていた。
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