みだりな逢瀬-お仕事の刹那-


またチュッと唇に軽く触れるキスを落とされた。…これでは一夜限りの悪い夢だったのだと、思い込めなくなるのに。


メガネも取り払われた状況は心もとなく、キュッと胸が締まる感覚でツンと目の奥に痛みを覚えた。



“私欲のためなら誰かれ構わず切り捨てる”のだから、…私はぜったいに巻き込まれたくない。


しかし、自問してする隙を与えない手の動きが撫で回していたウエストから移り、右胸を捉えて包むように揉み始めた。


すると片方の胸に彼の吐息を感じた刹那、膨らみの頂を舐めるように口に含まれてしまう。


「やっ、ン…」

素肌に触れる彼の髪の毛のくすぐったさも手伝い、口から漏れる言葉は熱の籠った非力なもの。


執拗にキスしたり吸いついたり、と瑞々しい音が静まり返った部屋の中で妖しく響くごとに止まらない。


覆い被さっている彼を押し退けようとしても、所詮は自らオンナの非力さを表すだけで効果ゼロ。


「った、い」

それどころか彼の情欲をアップさせる道具にすぎず。すでに慣らされた胸に、カリと歯を立てられた。


「痛いのとどっちが良い?」

ふわふわ身体の熱を上げてきた愛撫から、痛みを感じさせられて眉を顰めれば小さく笑う彼。


胸に顔をうずめながら薄墨色の眼を向けられ、お腹がきゅんと相応しくない熱に侵された。


お酒に酔って記憶の薄れた一夜の激しい過ちなんかより。互いの表情が窺える、日の差す中でのセックスは羞恥を駆り立てるのに…。


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