LOVELY☆ドロップ

ここに来た時感じたレストランのやわらかな雰囲気も――。

穏やかな空気も――。


軽やかな気持ちも――。


すべて吹き飛んでしまった。

あるのは、ただ冷たくなった体の中に宿る赤ちゃんと、まだ膨らんでいないあたしのお腹だけ……。



『中絶してくれ』

『俺には妻がいるんだ』

『1歳になる子供も』

『会社も辞めてくれ』


言われた慶介の氷よりも冷たい言葉が頭の中でループしていた。



じゃあ、慶介はどうしてあたしと付き合ったのだろう。


慶介にとって、あたしのことはただの遊びにすぎなかったってこと?


きっと、華やかな東京とは違う田舎育ちの野暮ったいあたしが慶介の色に染まっていくのが楽しかったんだ……。




慶介にとってあたしとの恋はただの火遊び。


だけど……だけどね、あたしは違った。

慶介に本気だった。


会社では上司に次期社長と期待をかけられるくらい遣手で、モデル並みの容姿で、女性にモテて、だけど困った時はいつも駆けつけてくれて、とても親切にしてくれた。


家族から離れて都会に移り住んで、当然友人も知人さえもいなくてひとりぼっちだったあたしに声をかけてくれたそのことがなによりとても嬉しかった。



あたし……。

あたしは本気だった。

少なくともあたしは慶介と本気で結婚を考えていた。


慶介も、てっきりあたしと同じ気持ちだと、そう思っていた。


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