LOVELY☆ドロップ

「でしたら、あたしが着ているこの服はいったいどなたのものでしょうか?」

お姉さんの服とかかな?

あたしはもう一度尋ねた。


「沙良(サラ)は……この子が生まれると同時に亡くなったんだ。君が着ている服は、捨てることができなかった妻の服なんだ」


あたしの問いに男の人はそっと告げると、隣で眠っている女の子の頭を優しく撫(ナ)でた。


それは、とても愛しむように……。



この人は、とってもこの子を大切にしているんだ。

そう思うと、なんだかあたしの胸にあたたかいものがこみあげてくるのを感じた。


男の人と女の子を見ていると、あたしのお腹にいる赤ちゃんと自分自身の姿が被った。



――ああ、あたしの赤ちゃんはお父さんがいない。

この人のように、これから生まれてくる子供をひとりできちんと育てあげることができるだろうか。

一抹(イチマツ)の不安があたしを襲いはじめる。


あたしはうわ掛け布団の端を掴んでいた手を布団の中に仕舞い込み、赤ちゃんがいるお腹をそっと撫でた。

その瞬間、何か苦いものが口の中にあふれそうになった。


「そう……だったんですか、なんだか出過ぎたことを訊(キ)いてしまってすみません」


あふれ出てくる苦い思いを堪(コラ)えるため、口を動かして言葉を吐き出す。

「いいんだ。もう5年前の話だし、妻を亡くしたのは寂しいと言えばそうなるけど、妻は天国でこの子を見守ってくれているだろうし……。

それに、亡くなった妻も今でも誰かの役に立っていることを知って嬉しいと思っていてくれているだろうから……」


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