短編集~The Lovers WITHOUT Love Words~
家名と財力だけが目的の、愛のない結婚。
父の敷いたレールの上を進むしかないスミレに代わり、榊は幾度となく自分の主であるスミレの父に抗議したが、努力は徒労に終わっていた。
「大丈夫よ、これからだってきっと・・・」
次の言葉を言いよどんだスミレに、榊がたたみかける。
「あんな男に嫁いで、お嬢様が幸せになれる訳がありません」
「・・・榊、あなたらしくないこと言うのね」
スミレは笑ったが、その瞳には涙が浮かんでいた。
「自分にはどうしようもないことばかり。いつもそうだったし、この結婚だってそう。でも、あなたがかけてくれた魔法のおかげで、私は幸せでいられたのよ?」
振り返れば、いつもそうだった。
涙に濡れたベッドを、かぼちゃの馬車に変え。
孤独に震えた暗い夜を、アラジンのランプで照らし。
空しいばかりのパーティーを、アリスの滑稽なお茶会に。
どうしようもない現実が、変わることはなかった。
けれど、スミレはいつも笑顔でいられた。
その隣にはいつも榊が寄り添っていた。